
一章
4・まぼろし -2
言う通りにしてほしいんだ、とゼノは言うと影の中からぴょんと飛び出しアリオンの膝の上に乗った。
真っ黒なシルエット。何かのマスコットやぬいぐるみのような小ぶりの大きさだ。乗られてもまるで中身がないかのように軽い。
「青い月の光が差したらその光に向かって走ってほしいんだ。そして終点までついたら・・そjkld##ouiu+*`?<<」
「なんだ?」
急に声が聞き取りにくくなってアリオンはゼノに顔を近づけた。
「ゼノ?聞こえないぞ。どうしたんだ」
「・・*㎡:::**S*dfud」オに・・??%&’Ibke:lipgh;l].c:;l]は・・ヲ・・zzz ≡]」
ラジオの放送終了時のような機械音がしてゼノからの応答が消えてしまった。
「どうしたんだよ一体。おい、ゼノ。出してくれるんじゃなかったのか。おいおい・・」
呼び掛けても待っても何も言わない。
アリオンは再び静寂の中に取り残されふらふらと立ち上がった。
月の光は消え、辺りはすっかり暗くなった。
「どっちへ行けばいい」
周囲を見回してもいずれも同じような風景が広がっている。
一人になると急に足元から冷気を感じた。
「動かない方がいいのか」
意気消沈のため息をつくと同時に耳を澄ました。
声が聞こえたような気がした。
ゼノ、とつぶやいて後ろを振り返ろうとして硬直する。
何か居る。
ゼノよりも大きな毛むくじゃらの何かが真後ろに。
大きな獣の吐く息がアリオンの後頭部にしっとりと絡みついた。
アリオンは恐怖で前に飛び出すと、振り返った瞬間両腕を突き出し正面から獣の姿を見た。灰白色の長い毛におおわれた四足歩行の獣があぎとを広げアリオンに襲い掛かる所だった。真っ白な瞳と目が合う。死んだ魚のような目。だがわかったのはそれだけだった。
手を突き出すと同時にアリオンは獣と反対方向へ吹き飛んだ。
(ギリギリ。俺も『護身用パック』入れといてよかった)
アミアのような最新式ではないし、洗練されてもいないが瞬時にプログラムを起動して最悪の事態を逃れた。起動スピードだけは自信があった。
ずだっ!と、木の幹に抱き着くように着地するとアリオンは振り返ることなく走り出した。背後から獣が木にぶつかりながら追ってくる音がする。
何度か護身用パックを起動させて獣と距離を測りながら逃走し、限界を感じ始めた頃足元に青い光が差した。
「これだな、ゼノ!」
アリオンは力を振り絞って青い月の光の差す方向に飛び込んだ。したたる汗のしずくも一緒に飛んだ。
ぽんぽん、と飛び石のように空から青い光が円を描き、アリオンはそれを追いかけた。まだ遠い前方の空間が白んで見え始めた。
やがて終点に到着すると明るさが目を襲った。
目に飛び込んだのはアリオンが見たことのない風景だった。
巨大な壁一面に咲き誇る花々。
ツルを巻いた植物が絡みついた壁は東から西へ終わりが見えない長さ。上から下までを赤、白、黄色、青にピンク、紫、ありとあらゆる色の花がとりどりに咲いていた。
「こんなところに花が咲いてるなんて」
アリオンはあっけにとられて立ち止まり、更に上を見上げてぎょっとした。そこに木はなく太陽と青紫色の空が広がっていた。
「昼間なのか?」
はっとして振り返ると獣は追ってきておらず胸をなでおろす。
「まいたか。よかったあんなのが居るなんて聞いてないよ」
目の前の花の壁は、今まで居た夜の森とは程遠く平穏で美しく輝いていた。花びらは水滴を乗せて甘い香りをまとっている。
この場所は今までたどり着いた場所とは明らかに雰囲気が異なっていた。
アリオンは花壁に近づいた。生体プログラムを連続使用してエネルギーを消費していたため腹の虫が鳴き出した。
(花じゃ腹は膨れないしな。さてここで何をすればいいんだ)
頬に冷たいシャワー。
雨が降っているのか、と思って見上げるとすぐ傍で小さな虹がかかっているのが見えた。その向こうに誰かが壁に水を散布している姿がぼんやり見える。
視野がフォーカスして人物をとらえた時アリオンはあっと叫んだ。
娘が一人、右手でホースの口をもって花に霧状に水をあげていた。
白い柔らかそうな髪は短く切りそろえられている。薄い生地の短い袖のシャツ、足元まで覆ったかしゃかしゃするオールインワンのパンツ。素足に底の薄い靴。健康的な白い腕が陽光をきらきらと反射している。
声に気づいて娘はアリオンを見た。長いまつ毛の下に黒い宝石のような瞳。まばたきするとこちらに近づいてきた。
「こ、こん、こんにちは」
突然のことにアリオンは慌てふためいた。
「初めまして・・その・・」
アリオンは娘の顔を見つめてかっと耳が熱くなるのを感じた。
「きれいですね。て花がね。いやもちろんあなたもきれいですが。何言ってんだ俺は・・」
しどろもどろしながら、はははと照れ笑いした。
冷静さを取り戻そうと咳払いした後アリオンは背筋を伸ばしていった。
「突然すいませんでした。あなたが知ってる人にそっくりで驚いたんです」
そう言いながら頭から足先まで目に焼き付けた。
娘はイオに瓜二つの外見をしていた。
異なっているのは彼女が生きている事。その姿はアリオンを驚愕させた。
この人は一体なんなのだろうか。なぜイオに似ているのだろう。話しかけても大丈夫なのだろうか。
頭は混乱して大渋滞を起こしていた。
ゼノは青い光の中へ走れとは言ったが、その先で何をすればいいのか教えてくれなかった。
そんな心の中などつゆ知らず、娘はアリオンの顔をじっと見つめている。
ホースの口からは水が流れ続けていた。
アリオンも無言で見つめ返した。
しばらく何もいわずにいると、黄色い蝶がひらひらと飛んできて二人の間をランダムに飛行し始めた。
先に沈黙に耐え切れなくなったのはアリオンの方だった。
「・・イオ?」
アリオンが呟くと娘はピクリと動いて左手を自分の胸の上に置いた。
「ィ・・お・・?」
たどたどしく復唱する。
アリオンは娘が声を発したことに一瞬飛び上がりかけて、うん、とうなずいて片手を前に出して娘を指した。
「イオ」
娘は首をかしげている。不思議そうな表情。
アリオンは慌てて「ごめん」と付け加えた。
(そ、そうだよな。ただ似てるだけなのに。あっちからしたら急に知らない名前で呼ばれても困るわな)
アリオンは自分の胸に手を置くと
「俺はアリオン」
と名乗った。
「あ・・いおん?」
「アリオン」
「あいおん」
娘は話しにくそうにアリオンの名前を呼んだ。
発音の様子を見ると、ひょっとして自分の言語は通じていないのではとアリオンは感じた。アリオンは生体プログラムの『同時翻訳』機能を起動しようとした。しかし・・
「konnnitiha.watashinonamaeha1012.」
「anatagatotuzenarawaretakarabikkurishimashita」
「えーっと、あれ?」
娘の話す柔らかく流ちょうな言葉を聞きながらアリオンは斜めに傾いた。
(だめだ。起動できない。なんでだ、ひょっとしてエネルギー切れ?)
先程まで使えた生体プログラムはウンともスンとも言わなくなっていた。
(まずいぞ。これで森に戻ったら暗くて見えないし、獣から逃げられない・・)
アリオンが途方に暮れていると娘はアリオンを指さした。
「あいおん」
「あ、うん、そう。アリオン!」
突然呼ばれてアリオンは慌ててうなづいた。
自分の事をアリオンだとわかってくれたらしい。少し間違ってはいたがどうでもよくなった。
ただただ通じたのがとても嬉しくてアリオンは笑った。
娘の瞳と口元が笑顔の形に動くと、さっと壁の中に手を突っ込み花を一輪摘み取った。
花を顔に寄せると目を閉じ香りを吸い込む。
ふーっと息を吐くと花の香りがふわっとアリオンのいる場所まで届いた。
イオの姿をした娘の行動にアリオンはくぎ付けになっていた。まるで人間のイオだった。アンドロイドでなく人だったらこんな風だったに違いない。
しばし香りを堪能すると娘は両手に花を持ちアリオンに手渡そうとした。
警戒心もなく心を開いてくれる。
「くれるって?」
アリオンが聞くと娘はぐいぐいと花を胸に押し付けてくる。
「iikaoridesyou.watashinookiniiridesu.」
「ありがとう」
アリオンは花を受け取ると娘に笑いかけた。白い大きな花びらから強い甘い香りがした。
花を受け取る時娘の手が触れアリオンはこれは現実である事を実感した。
「dokokaniikutocyudesuka? annaishimasyouka.」
「んー、言ってる事わからん・・。嬉しいけどこれからどうしようかな。腹も減ったし」
花を見つめるうちにアリオンの腹がきゅーっと切なく鳴った。
「maa」
「はは、花の匂いでおなか減っちゃった」
娘はサロペットの腰のあたりに手を突っ込むと渋茶色の子袋を取り出した。
柿色の麻のひもを解き中から小さな薄い板切れのような物を出し自分でかじって見せた。
それからアリオンに向って袋の口を向けた。食べ物をくれるらしい。
深く考えもせず頬張るとそれは菓子のようだった。穀物を薄く延ばして焼いたものに赤い香辛料がまぶしてある。少し辛く、香ばしさと塩み甘みもある。さくさくと口に入れると簡単に砕けた。初めて食べる触感だった。
「ありがとう。おいしいよ」
アリオンは娘に向って両腕で丸を作ったり胸をこぶしで叩いて満足していることをジェスチャーで伝えた。少しのどがつまった時はホースの水を植物と同じようにもらった。
花の壁の影になった部分に座ってアリオンは休憩した。頭上には太陽が輝き、足元では雲の影がどんどん動いていく。暖かい風がそよいでいる。自分の元居た世界との違いに、ここは天国のような気がした。
白い髪をふわふわと揺らしながら娘は花の一つ一つに顔を寄せて歩き、香りを楽しんでいる。
君は誰なんだい
どうしてここにいるんだい
何をしてるんだい
聞きたい事はたくさんあったが言葉が通じないせいで何もできない。
彼女の手にしたホースは元栓が見当たらずぼんやりとして見える。
現実感がなかった。
娘を目の端に留めながらアリオンは大きなあくびをした。
(なんか・・ずっとここに居たいかもしれない)
ついそんなことまで考え始めてしまった。お腹も満たされ眠くなってきた。
受け取った白い花をそっと顔に近づける。
鼻の奥が焼けそうなほど甘くて濃厚な香りに頭がじんじんしびれた。
(目を閉じたらどうなるかな。気が付いたらここから出れてたりしないかな。しないな)
花壁を背にして座るアリオンの前には、暗い夜の森が続いていた。眠気で目が閉じかかっているとぽうっと森の奥が明るくなった。
明るくなったり消えたり。月が出たり隠れたりする時みたいだとアリオンはぼんやり思った。
光の中、先ほどの巨大樹を真ん中に擁した青い湖が再び映し出された。
水際にはやはり人影が立ち尽くしている。
見つめているとそれは少しずつ少しずつこちらに向かって来た。
アリオンは立ち上がって身構えた。
「おいおいこっち来るなよ。嘘だろ」
隣に視線を走らせると娘は全く気付く様子無く花に顔をくっつけている。
アリオンはもう一度前へにらみを利かせた。
闇の中に浮かび上がる白い帽子、白い髪、白いドレスをなびかせた女はするりと音もなく近づいて来る。見覚えのある衣装。
帽子に付けられた赤い布で顔が隠れていたが突如風が強く吹きその正体をあらわにした。
肝が冷えた。
歩いてきたそれはイオと同じ顔をしていた。
アリオンが工場から持ち去ったイオの姿そのものだった。
湖に居るのは相手しちゃ駄目だからね、とゼノの声が蘇る。
(向こうから来る場合どうすればいんだよ)
目だけで左右を見渡す。どこまでも続く花の壁と没頭中の娘。
辺りに隠れられる場所はない。壁沿いに逃げるか、娘も連れて逃げるべきか。
迷ううちにアンドロイドのイオが花壁の前にたどり着いた。
「なんなんだお前は」
アリオンはもらった花を握ったまま叫んだ。
白い装束のイオはまるで生気のない無表情で機械そのものだった。
何かを求めるようにすっと両手を差し出した。
「doukashitano?あいおん」
隣から娘の声。
イオにそっくりな人間の娘とアンドロイドのイオー、
二人のイオが鉢合わせした。
アリオンが娘に気を取られた一瞬の隙をついてアンドロイドの腕が伸びた。
「うわあああ!?」
アリオンは叫ぶと横に吹っ飛んだ。
受け身を取ると、一秒前に居た場所に何かが叩きつけられどろどろとした流体の帯が波打っていた。帯の元をたどっていくとアンドロイドのイオの形が溶けるように崩れていくところだった。一度泥の塊のような物体になると、新たな形へと再構築されていく。
再び立ち上がった時、それはずいぶん簡素な姿になっていた。
顔と首と胴が一つになり、長い腕に二足歩行するわずかな脚。先ほどの獣同様、白く光る二つの目。全身が暗緑色に黒光りし体から絶えず水分の多いどろどろしたものがしたたり落ちていた。
アリオンに向って何か音を発している。
「か、怪物。化けてやがったな」
アリオンは壁にしがみついて立ち上がると勇敢にも目の前の怪物を吹き飛ばそうと試みた。
だが護身用パックを発動しようとするも、プログラムは開かない。
「くそっ。さっきまで使えたのになんでだよ」
焦っているとふっと目の前が暗くなった。同時に娘が両手を怪物に向け、自分の前に飛び出す姿が視界に入った。
「yamero!」
「ばか!やめろ」
怪物のどろどろの腕が伸び、娘を掴もうとする。
「イオ!」
アリオンが叫んで娘の背中を引っ張ろうと手を伸ばしたその時、急に目の前が明るくなった。
娘の腕が緑色の光に包まれていく。
「なんだひかって・・」
アリオンが見守る中、娘の光る腕は逆に怪物の腕をつかみ上げた。怪物は逃げ出そうと暴れ出したが娘が離さずにいると次第に身体が暗緑色から明るい緑に変わり始め、動きが鈍くなりほとんど動かなくなった。
夢を見ているような気持ちでアリオンは娘の横顔を見ていた。息も切らさず顔色一つ変わっていなかった。全く無防備そうな娘にこんな力があったのかと。
「・・ン、アリオン」
しばらくするとシャツの裾が引っ張られ、何度も呼ばれている事に気が付いた。
「アリオンてば!お待たせ!」
「おまって・・今かよ」
足元の影から長い耳の黒い体がホップした。
突然たたき起こされた気分だったアリオンに対し、久しぶりに現れたゼノは鼻息荒く言った。
「さっきは突然消えてごめんね。アリオン、今だここから出るんだ!」
「ああびっくりしたよ。お前大丈夫だったのか。って俺お前に言われてここに来たんだぞ」
「おっけおっけ、あの子に遭わせるのが目的だったんだ。あ、僕は大丈夫だよ」
微妙に時差のあるやり取り後、ゼノは娘の方を向いて飛び跳ねた。
アリオンが振り向くと、娘が怪物を掴んでいた両腕から水がぼたぼたとこぼれて地面に消えていくところだった。
「水になってる。怪物をた、倒したのかあの子」
「うん。ここはあの子の世界だからね、最強だよ」
「あの子の世界って。あの娘は何者なんだよ。話しかけたけど言葉が通じなかった。イオにそっくりだし」
アリオンが質問を投げかけるとゼノは身体に表裏があるのかくるりとアリオンの方に体を回転させて言った。
「わかりやすく言うとね、あれはイオの過去の姿なんだ。僕らが今いるこの花壁の世界はイオの記憶の中の出来事」
「過去?記憶の中だって?」
眉間にしわを寄せるアリオンに「うんうん」、と頭を前後に揺らしてゼノは言った。
「元々”森”はリーフチャンネルが現実にはみ出した姿で、あらゆる記憶が滞留している。
僕は”森”と今は眠っている”イオの記憶”をつないで、森に迷い込んだアリオンが来られるようにしたんだ」
「ゼノ」
「うん?」
「何言ってんだ」
「だよね、だよね。また説明するよ」
「ちょっと待てよ!過去のって言ったか?あの娘がイオの過去の姿って事?あれはイオって事?」
「そうだよ」
「人間じゃねえか」
「そう言ってるよ」
アリオンはゼノが言う”人間だった”頃のイオを見つめた。
何もなかったかのようにホースを片手に水をまき、壁の前で花を楽しんでいる。
「姿だけじゃない。この場所もそうさ。過去にイオが過ごした場所なんだよ」
アリオンは手を額に置いてゼノの言葉を遮った。
「待て待て待て頭が追い付かない。あれはあの腕が光ってたのは何だ?あんな事ができる人間がいるか?」
「それはね、深緑の・・
・・影響なんだ」
ゼノは途中で言葉をつぐんだ。
明るかった世界に暗い影が落ち、いつの間にか先ほどまでの深い森が辺りに満ち始めていた。
「またか。暗くなったり明るくなったりするな。満ち欠けするみたいな森だ」
そうアリオンが言うとゼノはうんうんとうなづいた。
「それぴったりだね。ごめんね、アリオン。
あのね僕は青い月が出ている間しかここにはいられないんだ。
もうそろそろ消えるから脱出方法を教えるね」
「わ、わかった」
目的は一にも二にも森からの脱出だった。
アリオンがうなづくとゼノは言った。
「生体プログラムを起動して”テレフォシー”を誰かにかけて。それが繋がれば元に戻れるよ」
「でもゼノ、俺プログラムが起動できなくなって」
「大丈夫、やってみて」
途切れ途切れにそう聞こえた後足元の影は動かなくなった。
テレフォシーは遠隔通話。起動して頭で念じるとプログラムを入れた遠くの相手と接続し会話ができる。
アリオンは言われた通りテレフォシーを起動しようとしてその前にもう一度イオの居た方向を振り返った。花壁も娘の姿ももうなく、夜の森が塗りつぶしてしまっていたがそこに居た血色のいい頬をしたやさしい笑顔の娘の事を思った。なんだか切ないようなわびしいような気持が漂っていた。
「きっと君を人間に・・」
アリオンは無意識に呟きながら意を決して、テレフォシーを起動した。
発信音・・
アミア、アミア聞こえるか
いたら居たら返事してくれ
・・・・
アリオン、今どこにいるの
・・・・
ここだよ 今から帰る
よかった
気が付くと少しの灯りといつもの車の音、波の砕ける音。放送塔の真下に立っていた。
もう日は落ちていた。
「ただいま」
アリオンは少しだけ辺りを見回してから目の前の、いつもの倍以上に目を見開いたアミアに言った。
「ごめん心配かけた、よな」
「突然出てきて、驚いたよ」
アミアは顔を引きつらせながら言うと、それ以上何も言わずにアリオンを抱きしめた。
時計の針が18時を回っていた。
あれだけ色々な事があったのに現実では1時間少々しか経っていなかった。
戻った直後にヘーゼルナッツ氏から連絡があり、アリオンはアミアと機械修工店に向かった。
ずっとアリオンを探しまわっていたとアミアは言った。
アリオンはアミアを探しに行ったつもりだったが、居なくなったのは自分の方だった事を知って大きなため息をついた。
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